小さな組織はメディアに生かされ、メディアに殺される

とす日記

情報発信の大切さが注目される時代の到来

 Twitter、Instagram、FACEBOOK、Google+とSNS(ソーシャルネットワークサービス)で多くの情報が氾濫する時代となりました。ひと昔前までは情報発信といえばテレビ、ラジオ、雑誌、新聞と限られていたのですが、いまでは記者でもキャスターでもない、ましてやタレントでない人でも手軽に画像や動画を使った情報発信できる時代になりました。
 これまでは大きな企業などは資本力を生かしてTVや雑誌でCMを流して集客につなげていたのですが、いまでは小さな組織であっても驚くほどの情報発信力で多くの人に自分たちの魅力を伝えることができる時代です。それも一部を除いてほとんどのサービスが無料でそれができてしまうから驚きです。そこで多くの組織は今までになかった「情報発信部門(担当者)」を設けて情報発信に精を出してます。それがまた今までの常識に縛られていないモノが多くて面白かったりして楽しいですよね♪
 

やはり強い大手メディアの影響力

 しかし、いくらSNSが影響力を持ち始めたといっても、やはりTVや新聞などの影響力は大きいです。これは実際に体験してみるとわかりますがFACEBOOKなどでおおくの「いいね」がついたとしても、やっぱりTVなどで紹介された方がホームページの閲覧数なども桁違いに伸びます。これまでは瞬間の閲覧数が10~20程度だったサイトでもいきなりに1000を超えて「503エラー(サーバーダウン)」なんてことはよくある話です。それほどまでに桁違いの影響力を誇るのが大手メディアの底力。とにかくすごいです。そこで組織が良くやる方法としては「メディアで紹介されたことをSNSやホームページで紹介する」という手段です。これをしてやることで「TVで紹介されていたのは私たちですよ~♪」と知らせることができるのであとの成約や集客に繋がりやすいと思われます。

小さな組織はメディアに生かされ、メディアに殺される


 ここからが本題なのですが、大きな影響力を持っているメディアにはどうしたら紹介してもらえるかというと、それには様々な手段があります。代表的な方法を言うと番組のディレクターさん宛に「おいしいネタ」を送って興味を持ってもらうのが定番だと思います。この「おいしいネタ」をまとめたのがよく聞く「Press(プレス)」と言われるものです。ディレクターさんも毎週、毎日のようにネタがあるわけではありませんのでこれはネタがない時期には助かるのでしょう、結構有効な手段として広く用いられています。このプレスで興味を持ってもらえたら番組から連絡が入りTVで紹介してもらえるわけです。余談ではありますが最近ではTwitterをみて番組を作る局も多いみたいですね。「RT」や「いいね」が多くついた投稿などはそれだけの力を持っているわけですから局としてもやりやすいのかもしれません。

 話は戻りますが、多くの組織は大手メディアでの情報発信によって自分たちを宣伝して多くの人に知ってもらうために必死になります。先ほども申し上げたように普段は同時に10~20人ほどしか見ていないホームページでもTVに出た瞬間に1000人くらいに膨れ上がったりもするわけです。もちろん普段からホームページの検索順位を上げる手段を講じていないとダメですが、テレビで興味を持ってくれた人がホームページを見に来てくれて集客に繋がればそれはとても嬉しいことです。「赤字が続いてもう潰れる寸前の組織が一気に有名な組織になる!」なんてこともけっして珍しくはないのです。
 TVに紹介された瞬間に多くの人がホームページの閲覧され、近くであれば来店(来場)されるでしょう。物販や飲食店であれば店に長蛇の列ができてたちまち有名店の仲間入り!ゴールデンタイムの番組で20分コーナーなどで取り上げられたら駐車場に入るための車も長蛇の列になりかねませんね♪すごいです!嬉しいです!!経営も安泰だ!!!

 

受け皿が小さい組織が陥りやすい情報発信の危険な一面

 大手メディアに紹介されることで今までに無いほどの知名度の上昇、集客や販売の向上につながるのは事実だと思います。SNSがこれだけ影響力を持ってきたとはいえ、高齢化が進む日本ではネットで情報収集する人よりもTVやラジオ、新聞や雑誌で情報収集する今までの方法になれている年代層が多いのも事実。やっぱり全国放送ではなくともTVなど大手メディアの影響力すごい。しかし悲しいかな、小さな組織にはその反響を受け止めるだけの受け皿が…無いのです。

 小さな器には少ない水しか入りません。小さなお店に多くのお客さんが来たらすぐに商品は無くなり、店内は込み合うので不満が渦巻きます。来た人は「なんだTVで見たから来たのに何も買えない(食べられない)し、レジも遅いしもう二度と来たくないな」となってしまう事が多くあります。地方自治体などが地方創生事業として観光客誘致をしたところで ①ご飯と食べる場所もない ②駐車場もない ③すごい渋滞で何もできない なんてことに陥ってしまい二度と行きたくない観光地化してしまうことがとても多いのも受け皿が小さいのが一つの原因です。

そして最悪なのは今まで来てくれていた(利用してくれていた)人が「もうあそこは並ばないといけないし行くのやめよう…。」となってしまう事もよくあります。情報を流すことで不満を増やす結果になってしまう事もあるのだということを絶対に忘れてはいけません。

 そしてここからが一番恐ろしいことです。一気にお客さんが増えることで多くの物が売れたり収益が上がるのは事実です。これは組織にとって最高にうれしいことに違いありません。しかし、本当に怖いのは中で働いている人が疲れて辞めてしまう事です。個人経営でもない限り固定された給料で働くスタッフはいつ落ち着くかもわからない異常な事態で仕事量が増え疲労がたまります。これは体力的にだけでなく精神的な疲労も蓄積してゆきます。鳴りやまない電話の対応、作っても作っても足りない状態。お客様の不満の矛先はスタッフに向けられクレームや愚痴を受け止め続けます。そして心身ともに疲労がピークに達し一人辞める、その穴埋めをするために頑張ったスタッフも疲れて辞める。新しいスタッフを入れたところで教育する間もなく辞める。最悪の悪循環ですね。でもまだまだ続きますよ、さらに追い打ちをかけるようにメディアからの取材の依頼がはいります。それはなぜかというとすごい行列や反響ぶりをSNSなどにお客さんがあげることで「話題性のある組織だ」と興味を持ったメディアが飛びつくわけです。そこで断れば助かったかもしれないのに欲を出して受けてしまうと…。
結局、お客さんや利用者は多かったのに「人手不足倒産(閉店)」をしてしまう事がとても多い原因の大半はこういうことです。「メディアに殺される」という表現を使うことがありますがそれはよく想像されているように供給不足によりお客さ逃げる事よりも中の人材が疲労のピークで辞めることによって起きる悪循環の方が多いと私は思っています。

情報発信のジレンマ

 SNSだけにとどまらず、メディアも活用した情報発信の重要性はどんどん高まっているにもかかわらず、その組織の受け皿が整っていないからという理由で情報発信できない状態をよく「情報発信(広報)のジレンマ」と私は表現しています。しかし、未来を怖がって情報発信を断り続けるのはただの縮小傾向に過ぎません。じつはその考えはとても危険で、その先には組織の衰退しか道は残っていないのだと思っています。
大きな組織であれば大きな器を持っているかもしれません、でも小さな組織になるとサービスの提供の限界も低いことが多く、受け入れることができる量も大小様々。情報発信する上でその見極めがしっかりとできる事が大切な資質となります。くれぐれもこの「広報のジレンマ」に囚われすぎないことが大切ですよね。

 

メディアに生かしてもらう

 情報発信の重要性が問われる現代で究極の情報発信ともいえる「超有名番組での紹介」の蜜の匂いは甘美なものです。断れる人なんてそうそういませんし断る必要もないのかもしれません。実際に自分でそういった業務に携わることで一層そのことがよくわかりました。
 しかし、大手メディアに紹介された店が閉店するケースの多くは中のスタッフが疲労により辞めたことによる人手不足だったり、「番組の趣旨により組織ブランドを面白おかしく紹介されて軽薄にしてしまう」が多いことは知っておかないといけません。紹介してもらう番組によっては「視聴者が笑えたらそれでいい」というものもあります。TVに出たいという気持ちが勝ちすぎてそういう番組に「由緒正しいブランド」が定着したものをとりあげてもらうと信用を失うことがあることも忘れてはいけない大切なことです。
 つまり、大きなメディアによって生かされるか殺されるかは担当者の判断次第なのかもしれませんね。いろんな情報が飛び交い溢れていますので何か変わった事や目を引く事をしなくてはいけないのはわかるのですが、その機を見計らって判断しないと取り返しがつかないことになる「諸刃の刃」でもある大手メディアさん。
 地方創生や地域での活動をされる人も少なくはないと思いますが、その組織がどこまでの事ができる組織なのか?どこまでの受け皿になれるのかをきちんと把握しておかないと一人の欲で組織を潰すこともあります。とくに地方創生などの場合はいろんな人の集合体で、協力なしでは何もできませんからね。私も情報発信してゆくために必要なものと不要なものを見極めてゆける目を養いながら、メディアに生かしてもらえるよう頑張りたいと思います。

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